Sholl, D. A.：The Organization of the Cerebral Cortex.（London ＆ New York. 1956）

はじめに

　「此の本は大脳皮質の組み立て（organization）について，そのある面を物語ろうとするものである。このように複雑な題目をかかる小冊子において論じようなどとは潜越のそしりを免れない試みであろうことは著者も承知しないわけではないが，ともあれ解剖学，生理学，心理学，臨床医学などの諸分野に於て行われた最近の業績の主なものをふり返つて，それらを相互に連関させつつ一応の統一的な見方を呈示してみようという試みも無価値とは言えまい。私自身はこの問題について統計学的な研究を目指してきたので，この本もまたそのような見地から書かれた。

　勿論私はこの本の記述が極めて不完全なものであることをよく承知しており，近々数年のうちに新しい研究が進められて，私が試みた解釈の誤りであることや，私が無視した業績のなかにより重要なもののあることなどが明らかにされていくかも知れない。しかしこのような複雑且つ難解な題目について簡潔にして筋道の通つた説明をするためには，数多くの仮説の中からある種のものを選び，他のものを棄てる危険を冐すこともやむを得ないであろう。云々」