Japanese
English
展望
網膜の神経生理
Neurophysiology of the Retina
富田 恒男
1
,
村上 元彦
1
T. Tomita
1
,
M. Murakami
1
1慶応義塾大学生理学教室
1Department of Physiology, Keio University.
pp.797-809
発行日 1958年4月30日
Published Date 1958/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901653
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光受容器である網膜が発生学的に中枢神経系の一部であることは周知の処である。神経生理学的にも網膜は興奮過程と制止過程の共存の場で,それらの相互作用によつておこる複雑な機序は中枢神経系のそれを髣髴せしめるものがある。従つて網膜活動機序の探求は同時に中枢神経系の生理の解明に大いに役立つであろうことは疑う余地がない。1947年にStockholmのNobel研究所のGranit教授が"Sensory Mechanisms of the Retina"1)と題するモノグラフの序文において彼が視覚生理学を志した動機を語つているが,それはSherringtonの名著"The Integrative Action of Nervous System"2)の中で視覚の機序と中枢神経系における反射の機序との間に存する幾多の類似点が強調されていたことが当時白面の学徒であったGranitをいたく刺戟し,これに終生の努力を傾けるに至つたのであるという。
事実四肢の一部に与えた刺戟によつて生ずる反射運動が脊髄におけるニューロン間の複雑な興奮過程と制止過程との相互作用の結果であるのと全く同様に,眼に与えた光が網膜を構成するニューロン間にやはり同様の複雑な過程を惹き起すことは今日では容易に直接これを証明することが出来る。
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