Japanese
English
綜説
網膜の生理学
Physiology of the Retina
中島 章
1
Akira Nakajima
1
1順天堂大学医学部眼科
1Department of Ophthalmology, Juntendo University
pp.237-242
発行日 1960年10月15日
Published Date 1960/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906150
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1.序
私は10年程前に同じ題目で医学のあゆみに綜説を書いたことがある。今度この綜説を書く為に文献を集めて見て感じたことは,この10年間に此の方面の研究が拡がり,進歩したけれども,他のいくつかの領域に見られたような画期的な飛躍的な進歩は残念ながら見当らないのではないかということである。このことは又,画期的な進歩が,新しい方法の導入をきつかけとして起ることが多いのを考えると,このような方法の画期的な進歩が,ある意味では少なかつたことを意味するのかもしれない。勿論,最近の電子工学の飛躍的な進歩は,生理学研究にも広く取り入れられ,普及してきたことは周知の通りであるが,質的な変化を起す程のものではなかつた,という感じがする。このような感じを持つ1つの原因として,次のようなことがあるのではなかろうか。これ迄の研究は分析的な方向へと進められ,1つの細胞,あるいはその細胞の部分における電気的なあるいはその他の変化の追求に主力が注がれて来て,現在ではこの方法で行き着く所迄来てしまつた,あるいはそれに近い状態にある。しかし,実際生体で起つている現象は,上のような方法で調べられた現象の単なる重ね合せではなくて,各要素間の特異な(というのは言葉が悪いかもしれないが)相互作用に基づいている場合がほとんどであつて,この相互作用をも何等かの方法で把えて行かねばならない。
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