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特集 第1回国際神経科学会展望
神経病学に於ける意識
Th.Alajouanine:神経疾患による意識状態の変化
Les altérations des états de conscience causées par les désordres neurologiques
黑川 正則
pp.461-468
発行日 1958年2月28日
Published Date 1958/2/28
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901613
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神経学における意識の症候論は,真に有効なものであろうとすれば,正常の意識状態に関する完全な知識から出発せねばならない。意識の概念は心理学者と神経医学者にとってまったく同一の概念ではない。意識を定義することは困難であろうが,実際に起る意識消失の観察はそれほど難しくはない。臨床家が意識の消失や変化を問題とする場合には明確な現実の前に立っているのであり,ただその形式,程度,解離の模様を正確に記述することが要求されるのである。
とはいえここでは,意識という表現の範囲を制限しようと企てたPercival Baileyの例に倣つて,私は,あいまいに用いられがちなこの言葉を次のように限定しておきたいと思う。すなわち意識とは神経系の機能能力であって,外界および身体に関する知覚経験を可能ならしめるものである。ここで経験と称するのは知覚反応を認識し,多少なりともその認識を維持することを意味する。従ってここでは,レベルの異る二種類の現象が関連することになる。もつともふつうの意味で理解される知覚能力と,心理学的現象との両者である。さてかかる現象の活動水準は極めて多彩であり,その過程は神経活動と同じくたえず変動を示している。従つてある瞬間の意識は次の瞬間の意識と同一ではありえない。Jacksonはつとに「意識はなんら実体ではない。
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