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特集 神経系疾患の診断法・2
運動麻痺—特に上位蓮動ノイロン傷害に由る片麻痺について
Hemiplegia due to Upper Motor Neuron Lesion
豊倉 康夫
1
Yasuo Toyokura
1
1東京大学沖中内科
1Okinaka's Clinic of Tokyo University
pp.50-70
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901503
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はじめに
今から75年前ロンドンで開かれた国際医学会(lnternational Medical Congress,1881)の席上,精神病院の一医師David Ferrierによつて記念すべき供覧が行われた。それは片方の腕がブラブラになつて動かない一匹の猿であつたが,Ferrierは大脳皮質の運動領に相当する部分を一側だけ切除した猿であることを説明した。之より先7年前,大脳皮質の運動領がHitzigによつて電気生理学的に発見されていたのである。供覧された猿の症状が人間にみる片麻痺患者のそれに余りにもよく似ていたことは,神経学者達の心を強くゆり動かした。偶々同席していたCharcotは猿の腕を指し,"C'est un malade!"(正に患者だ!)と感嘆の叫びを発したという。
随意運動の機構を明らかにするため,神経生理学と臨床神経病学との聞の歩みよりは,こうして19世紀も終りに近い頃欧州の学界に芽生えた。それから現在に至るまで約半世紀の間に,Sherringtonの生涯をかけた彪大な研究を始めとしVogt夫妻,Foerster,Fulton,Walshe,Penfieldなどいづれも当代の巨匠達によつて広汎な運動神経系の星座が次六と鍍ばめられたのである。
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