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筋痛には多くの原因がある。虚血下の筋収縮に伴う痛みは局所アシドーシスによりブラジキニンやアデノシンなどの発痛物質が生じるためと考えられる。また持続的な筋収縮や過度な負荷の場合,筋細胞膜の損傷による局所炎症が生じ,PGE2などの炎症mediatorで侵害受容器が感作され,あるいはsilent侵害受容器が活性化し,これらが比較的弱い機械刺激で興奮し痛みを誘発する。これ以外にも筋の拘縮や反射性の筋緊張の亢進,組織の浮腫による血流阻害が原因となっている可能性もあり,実際にはこれらの過程が複雑に絡んでいると考えられる。また筋からの侵害性入力は脊髄の収束ニューロンへ投射し,他の深部組織への関連痛を生じる。それが筋炎の場合のように持続すると,脊髄の収束ニューロンの受容野が拡大し,新たな受容野が出現したり,刺激に反応するニューロンの脊髄分節が広がるなど,脊髄レベルで新たなシナプスが機能するようになる。また,筋からの短時間の強い侵害性入力が脊髄レベルでの侵害性反射活動や侵害性ニューロンの興奮性を長期にわたって高める。この現象は末梢の入力を遮断しても持続することから,中枢神経系において可塑的な変化が生じたものと考えられる。このように筋からの持続的な侵害性入力は,脊髄レベルにおいて可塑的な変化を生じ,反射を亢進して筋緊張を高め,新たな筋痛や慢性痛の原因となるので,筋の痛みを安易に考えることなく迅速にその痛みを除去することが大切である。
Various mechanisms induce muscle pain. Pain provoked by ischemic muscle contractions is due to algesic substances such as bradykinin or adenosine produced by local acidosis and/or ATP deficiency. Sustained muscle contraction or overload of the muscle induces muscle membrane disruptions and produces inflammatory chemical mediator such as prostaglandin E2 which sensitizes the muscle nociceptors and may activate silent nociceptors.
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