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はじめに
脳の神経細胞は,グリア細胞や他臓器の細胞に比べ虚血侵襲に対してきわめて脆弱である。その脆弱性の程度は,脳の部位によって大きく異なっており,海馬CA1領域の錐体細胞や視床網様核神経細胞,小脳プルキンエ細胞などは高い脆弱性の典型例であろう。スナネズミにわずか5分間の一過性虚血を負荷すると,CA1錐体細胞は血流再開後一旦は完全にその機能が回復したかに見えながら,数十時間の経過を経て細胞死に陥ることがよく知られており(遅発性神経細胞死)1),脳虚血動物モデルの一つとして広く用いられている。虚血によって死滅する神経細胞の死の過程については,現在十分に解明されているとはいいがたく,虚血の程度や時間など循環系の要因,脳の部位,神経細胞の種類,グリア細胞の状態,脳圧,温度や薬剤濃度の環境などによって実に多面的,複雑な機構が絡み合っていると考えられる。壊死かアポトーシスかといった細胞死の結末からみた議論はさておくとして,上記の遅発性神経細胞死をはじめ,少なくとも一部の虚血障害の初期過程に,グルタミン酸サージとそれに呼応する細胞内カルシウム濃度上昇(興奮毒性Excitotoxicity)2)が重要な役割を果たしていることが確実視されている。
Ischemic neuronal damage appears in brain in many different manners depending on local cerebral blood flow, on activities of glial cells, on pathological functions of endothelial cells, and on environmen-tal conditions such as temperature, free radicals, ions, or drug concentrations. However, the most remarkable feature is the different vulnerability to ischemia on different type of neurons ; pyramidal neurons in hippocampal CAI area are the most susceptible ones.
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