Japanese
English
特集 睡眠と睡眠障害
序文―睡眠科学の重要性
Introduction: Importance of basic sleep research
井上 昌次郎
1
Shojiro INOUE
1
1東京医科歯科大学医用器材研究所
1Institute for Medical and Dental Engineering, Tokyo Medical and Dental University
pp.5
発行日 1995年2月10日
Published Date 1995/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900612
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- Abstract 文献概要
現代は人類史上かつてなかったほど,睡眠と睡眠障害に対する関心が高い時代である。その大きな理由として,一つには脳科学が進歩して睡眠の生理学的な役割がしだいに認識されてきたこと,もう一つには現代社会が睡眠を慢性的に犠牲にするような活動様式になったことがあげられる。つまり,本特集の主題がいま,学術的にも社会的にも,一躍クローズアップされているのである。
脳科学からみると,睡眠は単なる活動停止の時間ではなくて,高度の生理機能に支えられた適応行動であり,生体防御技術である。脳は人工的な電脳機器のようにいつも同じレベルの活動を続けることはできない。質のよい睡眠をとらないかぎり,脳は高次の情報処理能力を発揮できないのである。それゆえ,発達した大脳をもつ人類にとって睡眠の役割は大きい。睡眠の適否が生活の質を左右することになるからである。記憶や学習など脳内の高次情報処理過程も,大脳皮質の休息と活性化の現象を抜きにしては理解できない問題であろう。しかも,睡眠の機能についてはまだよくわかっていないことが多いから,知的探究の対象として睡眠の基礎研究はきわめて魅力に富む将来性豊かな領域なのである。
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