Japanese
English
特集 呼吸と発声
序文
Respiration and vocalization: introduction
有田 秀穂
1
Hideho ARITA
1
1東邦大学医学部第一生理学講座
1Department of Physiology, Toho University School of Medicine
pp.351-352
発行日 1994年6月10日
Published Date 1994/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900534
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
呼吸と発声の神経機構は,呼吸筋と上気道筋の共同運動という面で共通性があるが,その共同運動パターンの面では,次のような相違がある。呼吸では,横隔膜による吸気運動と,それに連動した喉頭開大筋の活動が主体であるが,発声では,呼気筋(腹筋)による呼気運動と,それに連動した声門の緊張が主体である。呼吸は吸気性で,発声は呼気性であると,単純化して区別できる。咳やくしゃみ,嚥下や嘔吐なども,呼吸筋と上気道筋の共同運動と定義されるが,その運動パターンも,それぞれ固有のものがある。嘔吐では,本来,吸気筋である横隔膜が呼気性に働き,腹筋と協調して腹圧をあげる作用をし,この時,声門は強く収縮するという,特徴的な共同運動パターンを示す(本特集の野中聡論文を参照)。このような明確な運動パターンの違いだけではなく,痛みによる呼吸パターンの微妙な修飾や,あくびという特殊な呼吸形式,睡眠による一過性の無呼吸なども,呼吸筋と上気道筋の共同運動パターンの修飾,変動として位置づけることができよう。それぞれ異なった生理機能,行動状態が,呼吸筋と上気道筋による異なった共同運動パターンを形成させるといえる。共同運動パターンの相違は,参加する筋群の組み合わせや,個々の筋の時間的空間的な連携様式の違いとしてあらわれるが,そのプログラム(柔軟性のある神経結合)は脳内のどの部位で,どのような機構で形成されるのであろうか?本特集は,この課題に焦点をあてて企画された。
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.