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はじめに
顎筋は下顎骨に付着し,安静時での下顎位の維持や三次元的な顎運動を担う骨格筋の総称である。咀嚼運動を司ることから咀嚼筋とも呼ばれ,閉口時に活動する閉口筋群と開口時に働く開口筋群に分類される。解剖学的には,閉口筋である咬筋,側頭筋,内側翼突筋などは頭蓋骨にその起始部を持ち,開口筋である顎二腹筋,顎舌骨筋,オトガイ舌骨筋などは舌骨に起始部を持ち,舌骨上筋群とも呼ばれる。顎二腹筋後腹が顔面神経,オトガイ舌骨筋が舌下神経によって支配される以外,他の顎筋はすべて三叉神経第三枝(下顎神経)に支配される。これら顎筋は巧妙な顎運動からも推察されるように,おのおのの役割に応じた収縮特性やエネルギー代謝特性を有する筋線維で構成されている。古くより,酵素組織化学的検索によりエネルギー代謝特性からの筋線維の分類がされ,生理学的機能(力学性)との関係が研究されてきた15,18,21,23,25,38,49-51)。最近では酵素標識免疫測定法なども併用され,収縮蛋白レベルでの解析結果も報告されている25,39,40)。しかしながら,顎筋の力学特性に関する研究は,他の骨格筋の場合に比べて大変少ない25,27,36,42,43,49-51)。近年,筆者らはモルモットおよびネコの咀嚼筋スキンド(脱鞘筋線維)標本を用いて,発生張力のカルシウムイオン(Ca2+)感受性,最大発生張力ならびにATPase活性などについて解析した27,36,42,43)。
そこで本稿では,最初に,これまで分類されてきた顎筋の筋線維について概観し,次にこれら筋線維と力学特性の関係を,筆者らの結果も踏まえて,考察する。
The mandibular muscles are mainly composed of three different muscle fiber types, I, IIa and IIb classified by the techniques based on histochemical staining of mitochondrial and contractile enzymes, as in other skeletal muscles. However, the jaw-closing muscles of carnivora and primates are unique in having an unusual muscle fiber type called IIM fiber, which has high oxidative and glycolytic activities, being identified by the antibody reactions to isomyosins of contractile proteins (i.e., immunochemical studies) together with the traditional histochemical techniques.
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