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I.はじめに
中間径線維は微小管,アクチン線維とともに細胞骨格を構成する主要な線維系の一つである。中間径線維は微小管やアクチン線維と異なり,非常に安定な構造であり,また発現している組織により,構成する蛋白が異なっている1~3)。上皮細胞ではケラチン,間葉系の細胞や線維芽細胞ではビメンチン,筋細胞ではデスミン,アストログリアではグリア線維酸性タンパク質(GFAP),そして神経細胞ではニューロフィラメントが中間径線維を構成している蛋白として知られている。最近,神経細胞に発現している中間径線維蛋白としてニューロフィラメント以外にネスチン(神経上皮の幹細胞)4),ペリフェリン(主に末梢神経細胞や中枢の小さめの神経細胞およびPC12細胞)5~8),α-インターネキシン(発生初期の中枢の神経細胞)9,10)などが報告されているが,ニューロフィラメントは最も多くの神経細胞に,最も多く存在する代表的な神経系の中間径線維である。とくに径の太い軸索内では,その細胞骨格構造の大部分を占めているほどである。ニューロフィラメントの役割は軸索の太さを規定することではないかと推測されているが11~13),他の中間径線維の場合と同様くわしいことはわかっていない。
ニューロフィラメントは,神経細胞内において最もよくリン酸化されている蛋白の一つである。しかも,そのリン酸化はニューロフィラメントの機能そのものに深く関与していると考えられている。たとえば,リン酸化の程度により,細胞内の局在が異なることが知られている14~16)。リン酸化型のニューロフィラメントは軸索に存在し,非リン酸化型のニューμフィラメントは細胞体と樹状突起に主に存在している(図1A)。軸索の成熟にもリン酸化は関与しているのではないかと示唆されているし17~20),またアルミニウムなどの神経毒による神経細胞の障害には,ニューロフィラメントの細胞体や軸索にけおる異常な蓄積が知られているが21,22),この場合にはリン酸化の亢進が起こっていると報告されている。リン酸化はニューロフィラメントの研究で最も多くの関心を集めてきた問題であるが,その意義についてもまだはっきりとした解答は得られていない。ここでは,ニューロフィラメントの構造とリン酸化およびその機能について,われわれが行なった研究結果を基に,最近の関連する報告を併せて概説するつもりである。
The neurofilaments (NF) is a major intermediate filament expressed in neuronal cells. NFs are constituted of three subunit proteins-200K (NF-H), 150K (NF-M) and 70K (NF-L). NF sub-unit proteins are composed of three domains-the amino (N)-terminal tail, the α-helix rich central rod and the carboxy (C)-terminal tail domains. The difference in the molecular weight of NF subunit proteins is due to the length of the C-terminal tail domain. NF-M and NF-H have a longer tail domain than NF-L. The C-terminal tail domains of NF-M and NF-H are shown to be projecting outside from core filaments. They have been suspected to interact with other NFs or cytoplasmic organ-elles.
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