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I.はじめに
近年,脳の疾患の中でも痴呆は,多くの研究者の注目を集めている。その理由としては,今後の高齢化社会では老齢者人口が著しく増加し,痴呆を呈する老人が急増していくという社会的な要因と,痴呆の成因が脳の老化のメカニズムに深く関連していることがあげられる。
正常脳の脳機能の解明をはじめとして,種々の疾患の病態についてポジトロンCT(Positron Emission Tomography;PET)を用いた研究が近年精力的に進められ,痴呆疾患の画像診断は著しい進歩をとげた。PETにより,これまでまったく謎であった脳の各種機能の局在が画像化された。さらに,これまでの測定方法では脳全体を一つのデータかまたは2次元像としてしか捉えられなかったが,3次元的に脳血流量,脳酸素代謝率,脳ブドウ糖代謝率などを測定することが可能となった。痴呆疾患はX線CTなどの形態診断では萎縮だけで,診断的に不十分であったが,PETなどの機能診断が用いられるようになり,有力な診断方法となった。しかも種々の標識物質を合成し,脳血流や脳酸素代謝率,脳ブドウ糖代謝率以外にも,神経伝達物質やその受容体,薬剤の脳内分布などを画像として得ることができるようになり,神経生化学,神経薬理学の分野の研究の進歩とあいまって,神経疾患病態の理解や治療の効果判定に役立つ情報が得られている。
The recent revolution in the nuclear medicine open the new era on the diagnosis and the investigation of pathophysiological mechanisms of the dementing disorders. In this article, we summarized the compiled results on the dementia derived from the positron emission tomography (PET) examination and presented our studies.
1. Alzheimer's disease
The most important contribution by PET on the dementing disorders was the discovery of the specific metabolic derangement in Alzheimer's disease. The parietal and temporal lobe hypometabolism was conspicuous in the early stage of Alzheimer's disease in particular when examined by glucose metabolism. This finding is useful in clinical diagnosis of Alzheimer's disease because formally we relied on the diagnosis of Alzheimer's disease to the pathological findings such as senile plaque and Alzheimer's neurofibrillary tangle.
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