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はじめに
老人性痴呆症,とりわけアルツハイマー型老人性痴呆症(本稿ではとくにことわらない限り,初老期発症のアルッハイマー病と合わせ,ADとする)の発症原因解明および治療薬の開発が強く望まれている。神経伝達物質からのアプローチとともに,AD脳に沈着する異常蛋白の生化学的,分子生物学的アプローチが最近活発になってきた。不溶性の異常蛋白としては,アルツハイマー原線維変化(NFT)の主構成物であるpaired helical filament(PHF)と,老人斑および脳血管アミロイドの主構成成分であるアミロイドβ蛋白(またはA4)が挙げられる。脳への沈着はβ蛋白のほうが早く,次いでPHFが生成するという考え方が一般的になってきており,β蛋白沈着の機序を明らかにすることは,AD発症メカニズムの1つの突破口となるものと期待される。β蛋白前駆体cDNAのクローニング以後,興味深い報告が相次いでおり,本稿が出版されるころには別の新しい知見によって考え方が変わっていることも十分考えられる。本稿ではプロテアーゼインヒビター活性をもつβ蛋白前駆体を中心に,現時点(1989年12月)での最新の知見を紹介したい。なおβ蛋白およびその前駆体の基礎的な知見は,拙文1)を参照していただければ幸いである。
Cerebral deposits of amyloid β protein (β-AP) comprising about 40 amino acids, as senile plaque core and vascular amyloid, are characteristic of Alzheimer's disease (AD).
The sensitive assays by polymerase chain reaction method have revealed that small amounts of mRNA species coding for novel β-AP precursor proteins (APP), APP714 and APP563 (secreted type of APP751), exist in human brain, as well as larger amounts of mRNAs for APP695, APP751 and APP770. APP751 and APP770 comprise Kunitz type trypsin inhibitor regions (APPI).
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