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細胞膜に存在する受容体であるG蛋白質共役型受容体(GPCR)とそのリガンド(ホルモンや神経伝達物質などの生理活性因子)は,種々の生理現象の調節に重要な働きを担っている。近年のDNA解析の進歩により,多数のGPCR遺伝子の存在が明らかとなった。筆者らはこれらのうち,リガンドが同定されていない「オーファンGPCR」のリガンドを同定する,独自の探索法を確立した。この方法を用いて,ヒト下垂体よりクローニングしたオーファンGPCRであったhGR3の内因性リガンドとしてprolactin(PRL)-releasing peptide(PrRP)を同定し,さらにPrRPがラット下垂体細胞からのPRL放出促進活性を有することを見出した。その後の研究から,PrRPにはPRL放出以外にも多様な作用のあることが明らかにされてきた。本稿ではPrRPの発見の経緯と生理作用の解析の現状について紹介する。
はじめに
ホルモンや神経伝達物質などの生理活性因子の多くは,細胞膜に存在する膜受容体であるG蛋白質共役型受容体(GPCR)を介して,細胞にシグナルを伝えている。GPCRは細胞膜を7回貫通する構造を有していることから,7回膜貫通型受容体(7TMR)とも呼ばれている。GPCRファミリーは,受容体ファミリーとしては最大のものであり,近年のヒトやマウスのゲノムプロジェクトによって,その全貌が明らかにされつつある。GPCRには匂いや味覚などの感覚受容体も含まれているが,創薬のターゲットになりうると考えられる生理活性物質を内因性のリガンドとして持つGPCRは,約350種と推定されている。しかしこのうちの約1/3はリガンドが同定されていない「オーファンGPCR」である。これらのリガンドを同定することは,基礎研究として生理現象の解明に役立つだけでなく,応用研究としても新しい作用を有する医薬品の開発につながる可能性のある重要な課題となっている。筆者らはいち早く,オーファンGPCRのリガンド探索に取り組み,独自の探索法を構築してオーファンGPCRであったhGR3の内因性リガンドとして,prolactin(PRL)-releasing peptide(PrRP)の同定に成功した1)。hGR3が下垂体に高発現していたことから,PrRPの下垂体作用について検討し,PrRPがラット下垂体細胞からのPRL放出促進活性を有することを見出した。本稿ではPrRPの発見の経緯と,生理作用解析の研究の現状について紹介したい。
Guanine-nucleotide-binding protein(G protein)-coupled receptors(GPCRs)and their ligands play important roles in the regulation of various physiological phenomena. We have developed an approach to identify orphan GPCR ligands, and succeeded in the identification of an endogenous ligand”prolactin(PRL)-releasing peptide(PrRP)”for an orphan GPCR, hGR3, obtained from human pituitary gland. Although PrRP was initially found to show a specific PRL release promoting activity in the rat anterior pituitary cells, recent researches have revealed that PrRP has various functions in addition to the promotion of PRL secretion. In this article we describe how PrRP was discovered and the current status of the research on the physiological functions of PrRP and its receptor.
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