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電位依存性Ca2+チャネルは細胞膜の脱分極を感知し,細胞外に高濃度に存在するCa2+を細胞内へ選択的に透過させ,多彩なCa2+依存性の生理現象,例えば神経伝達物質放出や膜興奮性調節,様々な細胞内酵素類の活性化・不活性化,遺伝子発現調節などを引き起こし,多種多様な生理機能調節において中心的な役割を果たしている。近年,様々なタイプの電位依存性Ca2+チャネルのクローニングが行われ,分子レベルにおける機能調節メカニズムの解明が進展するとともに,このチャネルを構成する様々なサブユニットタンパク質の遺伝子欠損マウスが作製され,個体レベルにおける機能解析が急速に進んでいる。
はじめに
Ca2+はほとんど全ての細胞において,種々の生理機能における情報伝達の二次メッセンジャーとして重要な役割を演じている15, 27)。定常時の細胞内遊離Ca2+濃度(約100 nM)は,細胞外濃度(1~2mM)の1万分の1以下に巧妙かつ厳密に保たれているが,様々な細胞刺激により一過性に数百nM程度に上昇する。この一過性Ca2+シグナルは,Ca2+と並んで二次メッセンジャーとしてよく知られているIP3(D-myo-inositol 1, 4, 5-trisphoshate)と細胞内情報伝達距離と寿命において大きく異なり,Ca2+は細胞外から流入あるいは細胞内から放出された極めて近傍においてのみ,作用していると考えられている。
一過性Ca2+シグナルをもたらす経路としては,細胞膜上に存在する電位依存性Ca2+チャネル,受容体作動性チャネル(NMDA型グルタミン酸受容体など),容量依存性チャネル(transient receptor potentialチャネル:TRPチャネル)などと,小胞体に存在するCa2+放出チャネル(IP3受容体とリアノジン受容体)が知られている。これらのチャネルのうち本稿では,ヒトおよびマウスにおいてチャネロパチーの存在が多く知られ,他章において臨床的見地から詳述されている電位依存性Ca2+チャネル(以下,Ca2+チャネルと略す)について,基礎の立場からその構造と機能に関する最近の知見,特に遺伝子欠損マウスを用いた解析により,個体レベルで判明してきた生理機能について紹介したい。TRPチャネル,IP3受容体については参考文献6,26,29,30を,受容体作動性チャネル,リアノジン受容体に関しては他章を参照してほしい。
Ca2+entry through voltage-dependent Ca2+channels(VDCCs)regulates various aspects of physiological function, including neurotransmitter release, regulation of cell membrane excitability and control of gene expression. VDCCs constitute a large family of multi-subunit protein complexes composed of at least four subunits, designatedα1, α2, βandδ. During the past decade, a number of genes encoding these subunits have been cloned, and cDNA expression studies using heterologous expression systems have revealed intricate nature of subunit interaction, and many biophysical aspects of channel function. In recent years, an entirely new strategy has been introduced in attempt of clarifying the physiological role of each VDCCs and this has proven to be very useful in defining previously unknownin vivofunctions of VDCCs. In this article, we briefly review a variety of phenotypes exhibited by mice in which one of the VDCC subunits has been deleted by gene targeting technology, and discuss possible native functions of the VDCC containing each of these subunits.
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