Japanese
English
特集 脳浮腫研究の進歩―基礎と臨床
近代的脳浮腫概念の由来
Developmental routes of modern brain edema concepts.
Igor Klatzo
1
,
伊藤 梅男
2
Igor Klatzo
1
1前米国NIH, NINDS, Neuropatholgoy and Neuroanatomical Sciences Laborafory-chief
2東京都神経科学総合研究所神経病理学
1前米国NIH, NINDS, Neuropatholgoy and Neuroanatomical Sciences Laborafory-chief
pp.180-181
発行日 2006年4月10日
Published Date 2006/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431100125
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古くはエジプト,ギリシャ,インカ時代から,救命のために絶望的ながら開頭術が行われており,当時からすでに脳浮腫の不吉な重要性が知られていたとも考えられる。脳の損傷は例外なく致命的であるとするHippocratesの記載に対して,門下のGalenが「しかし,ひどく傷ついた脳が治った例を見たことがある」と控えめに注釈した文が残っている5)。
病理学者による脳浮腫に対する最初の包括的な記述は,Reichardt6)に始まる。彼は1905年に脳浮腫に2つのタイプを認めた。その1つはHirnödem(brain edema),もう1つはÖ. Hirnshwellung(brain swelling)で,前者では脳の割面が湿って柔らかく,後者では乾いて堅いという,肉眼と手触わりに基づいた分類であった。ところがこのReichardtの分類は,不幸なことに,脳浮腫の病態生理学的発生機構を解く手がかりとはならず,また,Zülchによって記載された各種臨床病態における脳浮腫の詳細な組織学的基準8)を導く手がかりともならなかった。
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