Japanese
English
総説
脳浮腫の病態生理—総論的考察
Pathophysiology of Brain Edema:General Remarks
伊藤 梅男
1
Umeo Ito
1
1武蔵野赤十字病院脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Musashino Red Cross Hospital
キーワード:
brain edema
,
pathophysiology
,
BBB
,
neuron-glial interaction
,
cytotoxic edema
,
vasogenic edema
,
resolution of edema
,
mediators
,
therapy
Keyword:
brain edema
,
pathophysiology
,
BBB
,
neuron-glial interaction
,
cytotoxic edema
,
vasogenic edema
,
resolution of edema
,
mediators
,
therapy
pp.219-237
発行日 1995年3月1日
Published Date 1995/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900757
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いとぐち
脳浮腫が手足にくる浮腫(むくみ)と異なる第1の点は,後者が大きな組織間隙の中に水が溜るのに対して,脳の組織間隙は全容積の12〜25%と小さく,ここに水が溜るvasogenic edemaに加えて,glia細胞や神経細胞など脳実質細胞内に水が溜るcytotoxicedemaが存在することである。第2の点は,手足の毛細血管は半透膜で赤血球と血清蛋白の大部分は透過できない70〜250Åのwater filled poreを有する有孔内皮細胞(porous endothelia)よりなっているので,電解質や小分子を含む血清成分が組織液やリンパ液となって血管外へ流れ出る定常流が生じているのに対して,脳では血液脳関門,血液脳脊髄液関門,ならびに硬膜直下のクモ膜組織にあるarachnoid barrier layer(Nabeshimaら1975)などの関門によって完全に血液環境から遮断された実質内に水が溜ることである66)。脳実質の内部環境は微妙に調節され,組織容積のhomeostasisが保たれている。脳実質は75%が水分(灰白質は68%,白質は80%)からなり,脳浮腫が起こると最高10%の水分が増加する。第3の点は,閉ざされた空間である頭蓋内で脳の空間占拠性容積が急速に増大すると,脳全体のcomplianceが急速に減少して脳循環障害により二次的脳損傷を引き起こすことなどである。
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