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特集 情動の脳科学
情動の脳科学―動物・ヒトの遺伝子,分子,細胞,個体レベルの研究
Brain science of emotion: investigation from genetic and molecular to system levels using animals and humans
小野 武年
1
Taketoshi Ono
1
1富山大学大学院医学系研究科分子・統合情動脳科学
1Molecular and Integrative Emotional Neuroscience, Graduate School of Medicine, University of Toyama
pp.4-6
発行日 2006年2月10日
Published Date 2006/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431100015
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近年,いじめ,キレやすい子供や自殺者の増加,残虐性のある少年犯罪,情動障害およびそれに基づく行動障害など,「人間らしさ」の喪失が社会問題化している。また,環境ホルモンや周産期障害に伴う脳の発達障害や小児の心理的発達障害(自閉症や学習障害児をはじめとする種々の精神神経疾患),統合失調症患者の精神・行動の障害,さらには青年・老年期のストレス性神経症やうつ病の増加が社会問題化している。
労働者健康状況調査(1997年,厚生労働省)によると,仕事や職業生活で「強い不安,悩み,ストレスがある」労働者の割合は62.8%に達する。現在では,このような「ストレス」を感じている人は,90%近くに達するといわれている。これら情動や行動障害を伴う障害は,人間らしく日常生活を続ける上で重大な支障をきたし,本人にとっても非常に大きな苦痛を伴うだけでなく,深刻な社会問題にもなっている。このため,厚生労働省は1999年に「心の病に起因する自殺の場合,労災と認定できる」という判断基準を含む「心理的負荷による労災認定指針」を示し,2000年には「メンタルヘルス指針」を発表している。ITなど技術革新の変遷が激しい現代社会では,今後さらに生活様式の急速な変化やそれに伴う環境変化が予想され,さらに先進諸国では社会の高齢化と相まって,すでに精神障害が全疾病の40%を占めるようになってきている(2001年,WHO統計)。
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