Feature Topic がん免疫療法時代の航海図
がん免疫療法の現在地
—論考—日本において保険承認されたがん免疫療法のリアル—悪性黒色腫
吉野 公二
1
1がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科
pp.500-507
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200121
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悪性黒色腫における免疫チェックポイント阻害薬
悪性黒色腫に対する治療は、従来のダカルバジン(DTIC)などのcytotoxic agents(細胞傷害性薬物)が主流であった。効果については奏効率が10.2%と非常に厳しい結果であったが、実際にはダカルバジンを上回る治療薬がなく、30年近く状況が変わらなかったⅰ。しかし、2013年に免疫チェックポイント阻害薬として抗PD-1抗体のニボルマブが上市され、ダカルバジンと比べると奏効率28%、1年生存率62%とsurvival benefitを認め、一躍脚光を浴びたⅱ。免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブの特徴として、抗腫瘍効果発現まで3ヶ月程度を要するため、従来のダカルバジンと治療開始3ヶ月までは効果は同等だが、その後に効果が得られ、しかも持続すると言われている。上市され2年が経過した時点の状況として、2016年のAACR(American Association for Cancer Research)の報告では、2年生存率が47%であったⅲ。また、抗CTLA-4抗体のイピリムマブにいたっては投与した2割の患者で4年以上効果は持続すると言われ、ニボルマブより観察期間が長い分、長期にわたって効果が持続する症例もみられるⅲ。
一方、わが国の市販後調査では副作用項目が主体であるため、効果については現時点では報告されていない。今回、当科の症例を中心に実臨床において免疫チェックポイント阻害薬の効果と副作用について考察した。
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