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臨床推論領域において「ミミッカー」「○○ミミック」という用語がよく使われるようになってきたのは2000年代で、特に2010年以降に論文数が増えています。最近では国内の医学書・医学雑誌でも使用されており、認知度が高くなっています。一方、「ミミック」に対して「カメレオン」という用語もありますが、こちらはまだあまり認知されていない概念です。「ミミック」が“looks like one, but isn't.”という概念であるのに対して、「カメレオン」は“doesn't look like one, but is.” という概念になります(図1)。両者はそれぞれ「○○に化ける」「○○が化ける」という“臨床医が騙される”概念は共通ですが、どちらの疾患から見たかの“視点”が違うものになります(図2)。「カメレオン」は“一見その疾患らしく見えない非典型的症状”と言え、「ミミック」同様に教訓的なものであり、学術誌でも例えば『BMJ journals』の『Practical Neurology』では、2012年以降「(疾患名):mimics and chameleons」という論文を複数掲載しています。UpToDate®では疾患の解説において「differential diagnosis」の項が記載されていることもあり、これもその疾患がどの疾患と類似した臨床像を呈するかを知る材料になります。
どの疾患も何かしら他の疾患に“化ける”ことがありますが、本特集ではその中でもコモンかつ「いろいろな疾患に化ける」=「非典型的な臨床像が多い/さまざまな病態で潜んでいる」疾患を“カメレオンな疾患”として取り上げることにしました。難解なケースカンファレンスで頻繁に鑑別に挙がる疾患が呈するさまざまな症状から、コモンな疾患の非典型的症状まで、“カメレオンな疾患”に気づくためのポイント(こういった時にはこの疾患が隠れていることがある!)を読者の皆さんに知っていただければ幸いです。典型像だけでは捕まえきれない疾患の非典型像のゲシュタルト(全体像)を捉えましょう!
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