特集 今伝えたいクリニカル・パール—つくり方、使い方、活かし方
【継承された“とっておきパール”】
❼治り方のディテールは、経験でしか学べない
武田 孝一
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1がん研有明病院 感染症科/腫瘍リウマチ膠原病科
キーワード:
治り方
,
治癒過程
,
治療指標
Keyword:
治り方
,
治癒過程
,
治療指標
pp.1046
発行日 2024年9月15日
Published Date 2024/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204994
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「蜂窩織炎に対して抗菌薬を開始した後」「帯状疱疹に対してバラシクロビルを投与した後」「抗菌薬による薬疹を発症し、被疑薬を中止した後」、1〜2日経っても皮疹が改善したとは言えない時、しばしば医師や患者は不安になる。しかし、事前に皆が「明日〜明後日までは皮疹が拡大しうるが、普通は3日以内にピークを越え、1週間ほどかけてかなりよくなっていく」という流れを共有すれば、その不安は大きく軽減されるだろう。
術後の腹腔内感染症を念頭に抗菌薬を開始後、(5〜)7日経過してもC反応性蛋白(CRP)が下がっていない時、「CRPは参考にするべきではない」という考えに固執していると、「ドレナージを要する膿瘍の存在を念頭に、造影CTを撮像する」というアクションの遅れにつながりうる。ほかにも、「炎症性筋炎に対してグルココルチコイドを開始後、筋力はどのくらいのペースで改善していくのか」「バンコマイシンによる高度の腎毒性が顕在化した際に、薬剤中止後、いつ頃から腎機能は回復し始めるのか」「グルココルチコイドによるムーンフェイスは、減量とともにいつ頃から消退するのか」…など、枚挙にいとまがない。これらすべてにおいて、医療者がいつ頃から、どのようなペースで各治療指標が改善していくのか、つまり「病態が治療していく一般的な過程」を熟知しているか否かが、患者への説明内容や、日々の意思決定の精度に多大なる影響を及ぼすことは、臨床医なら容易に想像がつくであろう。
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