特集 今伝えたいクリニカル・パール—つくり方、使い方、活かし方
【継承された“とっておきパール”】
❻prepared mind
瀧宮 龍一
1
1諏訪中央病院 総合診療科
キーワード:
心房細動の塞栓症
,
失神
,
診療の軸足
,
prepared mind
Keyword:
心房細動の塞栓症
,
失神
,
診療の軸足
,
prepared mind
pp.1044-1045
発行日 2024年9月15日
Published Date 2024/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204992
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◦心房細動患者の臓器塞栓症を見たら、フルで神経診察せよ
研修医時分のことである。かかりつけのない50代女性が、左腰痛で早朝に救急搬送された。尿管結石を疑ったが、モニターを付けると心房細動である。“これは”と思い造影CTを撮ると、予想どおり左腎梗塞が見つかり、入院でヘパリンを開始した。しかしその夜、病棟で看護師が本人確認すると、自分の名前が言えなかったのである。すぐに頭部MRIを撮ると、左脳梗塞で運動性失語をきたしていた。わずかに出血も合併しており、ヘパリンが中止になった。振り返ってみると、初診時から、麻痺はないが自分の住所を話しづらそうにしている様子があった(が、気にも留めていなかった)。
心房細動患者の臓器塞栓症をみたら、ほかにも塞栓症を合併しているはずと思って、注意深く診察し直す必要がある。それが脳梗塞、特に皮質動脈の塞栓であれば、高次脳機能のみ障害され、麻痺や呂律不良など典型的な脳梗塞症状を欠くこともある。このような症例には普段評価しない失語・失行・失認といった高次脳機能まで神経診察する必要がある。出血性梗塞にヘパリンを開始してしまった痛恨の1例だが、上記パールが深く刻まれた。
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