特集 医師のウェルビーイング
【個人で取り組むウェルビーイング】
❺コラム「ワークライフバランスとウェルビーイング」—③介護を通して再認識した私と家族のウェルビーイング
武田 裕子
1
1順天堂大学大学院医学研究科 医学教育学
pp.684-685
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204837
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コロナ禍の続く2020年12月、自宅で母を天に送りました。母はその年の2月に転倒骨折して手術をし、術後の経過は順調であったものの、転院先のリハビリテーション病院で、職員と歩行していた際に転倒し、再度大腿骨を骨折しました。3カ月後の退院時には、坐位保持もできず、口に運ばれるペースト食をわずかに口にする程度で、要介護5の状態でした1)。しかしその後、訪問看護、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問リハビリテーション、栄養指導、訪問歯科診療による口腔ケア、訪問介護員(ヘルパー)の皆さんの丁寧なケアのおかげで、少しずつ元気を取り戻しました。9月にはNHK Eテレの医療番組「チョイス@病気になったとき」の取材で、言語聴覚士によるリハビリテーションの一環で讃美歌を歌っているところを披露するまでに回復しました。しかし、放映直後の11月末に虚血性腸炎でイレウスを発症し、胆汁性嘔吐が生じました。そして吐物誤嚥による肺炎のため、1週間で天に召されました。
私の介護経験は、❶宮崎に住む母の遠距離見守り1年、❷介護予防中心の東京での同居生活3年半、❸要介護5状態でのサポート5カ月、❹人生最終段階のケア1週間、でした。それをフルタイムで働き、海外出張も行いながら継続できたのは、ひとえに助けてくださる方々が周りにいたこと、「社会関係資本(social capital)」の活用とアウトソーシングによります。
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