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はじめに:異状死と突然死1,2) 異状死は誤記に見えるが,医師法21条は「医師は死体を検案して,異状を認めた場合,24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と規定する.東京都監察医務院は東京23区内の異状死の検案に携わるが,平成11年度の東京都の異状死率は17%であり,毎年全国で十数万人は異状死を遂げている.検案とは,死体の外表の検査(検死,検屍という)により死因,死後経過などの医学的判断を下すことをいう.
不景気の影響で自殺が異状死の約2割近くを占める一方,独居者や住所不定者の増加から孤独死も増えている.東京都監察医務院の死因統計によると,病死は異状死の約2/3を占める.病死の約2/3が循環器系死,その2/3が虚血性心疾患,約2割が脳血管障害である.つまり,地域性を別として,異状死の約4割が虚血性心疾患死と推定される.その8〜9割は発症後1時間以内の死であり,日本では異状死中の虚血性心疾患が5〜6万人,その大部分は突然死と推定される.日本人の虚血性心疾患有病率は欧米人や海外の目系移民の半分以下だが,決して少なくない.ところで,最近,医療事故や過誤の報道が相次ぎ,医療関連の司法解剖が激増しているなか,虚血性心疾患,心臓性突然死などが関連し,あるいは鑑別を要する例がある.また,入院中の突然死は虚血性心疾患と診断されやすいが,遺族の要望で解剖し,誤診と判明することもある.
死には生物学的・医学的な死と社会的な死の両面がある.法医学者は異状死の死因を決定し,人の死に関る関係者や外的要因の責任関係を公正に判断する.私は,監察医や法医学者として異状死の死因を決定してきたが,心臓性突然死,特に虚血性心疾患は,種々の法医学的,社会的な問題点を抱えることを数多く経験してきた.本稿においては,心臓性突然死の社会的側面を中心に解説する.
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