特集 —自信がもてるようになる!—エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全—新薬からトピックスまで
【Ⅰ章】「薬物療法」の新スタンダード
❹DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬
酒井 麻有
1
,
加藤 丈博
1
,
矢部 大介
1,2,3,4
1岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学
2関西電力医学研究所 糖尿病研究センター
3岐阜大学高等研究院 One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター
4東海国立大学機構 医療健康データ統合研究教育拠点
キーワード:
インクレチン
,
肥満
,
2型糖尿病
,
GIP/GLP-1共受容体作動薬
Keyword:
インクレチン
,
肥満
,
2型糖尿病
,
GIP/GLP-1共受容体作動薬
pp.276-278
発行日 2023年3月15日
Published Date 2023/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204191
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経口摂取した栄養素に応答して消化管から分泌され、インスリン分泌を促進する消化管ホルモンは「インクレチン」と総称され、今日までにGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)とGLP-1(glucagon-like peptide-1)が同定されている。GIPとGLP-1は、膵β細胞に発現する受容体に結合することで血糖依存的にインスリン分泌を促進し、血糖降下作用を発揮する。GLP-1は、グルカゴン分泌を抑制し、胃運動を抑制することでも食後の血糖上昇を抑制する。さらに中枢に作用して食欲を抑制し、体重減量効果を発揮する。
GIPとGLP-1は、消化管から分泌されると、直ちに蛋白分解酵素DPP-4(dipeptidyl peptidase-4)により不活化される。今日までに、DPP-4の働きを阻害し、内因性インクレチンの活性を生理学的レベルで高める「DPP-4阻害薬」、DPP-4により分解されにくいGLP-1アナログを薬理学的レベルで補充する「GLP-1受容体作動薬」が開発され、2型糖尿病治療薬として広く使用されている。特にGLP-1受容体作動薬は、体重減量効果に加え、心血管イベントや腎イベントのリスク軽減も示され、動脈硬化性疾患リスク(p.268)の高い「肥満2型糖尿病」に対する使用が増えている。さらに近年、1つのペプチドでありながらGIP受容体とGLP-1受容体を同時に活性化し、顕著な血糖改善効果と体重減量効果を発揮しうる「GIP/GLP-1共受容体作動薬」が製造承認を受け、肥満2型糖尿病に対する新たな治療薬として注目を集めている。
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