特集 COVID-19パンデミック 振り返りと将来への備え
【コラム】
❸インフルエンザとCOVID-19の治療薬開発
新井 宗仁
1
1東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系
キーワード:
A型インフルエンザウイルス
,
新型コロナウイルス
,
SARS-CoV-2
,
低分子医薬
,
抗体医薬
,
蛋白質工学
,
モノクロナール抗体製剤
Keyword:
A型インフルエンザウイルス
,
新型コロナウイルス
,
SARS-CoV-2
,
低分子医薬
,
抗体医薬
,
蛋白質工学
,
モノクロナール抗体製剤
pp.87-89
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204125
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インフルエンザの低分子医薬
◦ウイルス感染・複製を阻害する
抗ウイルス薬の多くは、ウイルスの感染や複製を阻害することによって働く。A型インフルエンザウイルス(p.60)の感染時には、ウイルス表面のヘマグルチニン(HA)が宿主細胞のシアル酸と結合したあと、エンドサイトーシスによってウイルス全体が細胞内に取り込まれる1)。この時ウイルスのM2蛋白質は、ウイルスRNAの細胞内への放出を促進する。これを阻害する「アマンタジン(シンメトレル®など)」が1960年代に開発されたが、近年はアマンタジン耐性株が主流だ2)。
RNAの放出後、ウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼがRNA複製を準備する。2018年に承認された国産の「バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ®)」は、これを阻害してウイルス複製を防ぐ3)。次に、ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)がRNAを複製する。国産の「ファビピラビル(アビガン®)」はRNAの部品(アデノシンやグアノシン)と似ており、RdRpが間違えてこれを取り込むとRNA複製が阻害される4)。しかし動物実験で胎児の催奇形性がみられたため、他の治療薬では効果不十分な場合に限定して2014年に承認された。
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