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近年、エコー機器の性能は飛躍的に進歩し、エコー所見の知見も数多く蓄積され、「人体の組織でエコー評価ができないもののほうが少ないのでは」と思えるほどになってきました。また、身体診察のようにベッドサイドで行うエコー検査であるPOCUS(point-of-care ultrasound)は、世界的にも非常に注目されてきており、活用の場面が著しく広がっています。特に浅い部位にある構造物の描出性能の向上は目を見張るものがあり、以前は“画像に映り込んでいるだけ”と思っていた構造(皮膚や筋肉、筋膜、腱、関節、神経、肺、横隔膜など)も、POCUSの主要な対象になってきました。さらに、ひと昔前は他の画像検査で評価することが多かった病態もPOCUSで評価できますし、熟練の技で実施されていた各種の穿刺手技や(中心静脈路以外の)血管確保などの処置も、エコーガイド下で安全かつ成功率高く施行できるようになってきています。POCUSのお陰で格段に診療がしやすくなる場面が増えており、活用できる状況を知っておくだけで、診療の幅が広がることは間違いありません。
そこで今回の特集では、「エコーを使って診療する時の思考の幅を広げること」を目的に、今後のスタンダードにもなりうるような比較的新しいPOCUSの活用について、現場の最前線でPOCUSを活用している先生方にご解説いただきました。新しい視点に焦点を当てるため、エコーの入門書でよく取り上げられる部位や病態の解説はあえてあまり取り上げず、正常像の解説についても、見慣れない方が多いと思われる筋骨格系エコーのみとしています。加えて、ポケットエコー機も増えていますので、在宅診療での活用事例も取り上げました(導入に興味のある方はポケットエコー機の紹介コラムp.995もご覧ください)。緩和ケアや教育、救急、病棟・集中治療などの場面に応じた活用も広がっており、本特集から、POCUSが場所を選ばずに医療の質と患者安全の改善に役立っていることを実感していただけることと存じます。
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