連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール
「妊娠の可能性はありません」
岡本 知光
1
,
堀川 麻衣
1
,
齊藤 調子
1
1地域医療機能推進機構中京病院産婦人科
pp.1197-1201
発行日 2015年12月10日
Published Date 2015/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208573
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はじめに
「妊娠の可能性はありますか」
「ありません」
産婦人科医,いや産婦人科に限らず生殖可能年齢の女性を診察する医師の誰もが経験する問答である.「ありません」という返事は往々にして故意に虚偽である.あるときはためらうように,また,あるときは堂々と.私が経験したなかでとりわけ印象に残っているのは,妊婦健診未受診の20代女性(未経妊)で,下腹部痛のため他院を受診,腹部単純X線撮影で胎児が写ったため当院へ搬送され,陣痛と判明し1時間もたたないうちに3,000g近くの児を出産した,という症例である.妊娠していたことを余程後ろめたく思っていたのか,彼女は受診当初から分娩台に移ってもかたくなに妊娠していることを否定しつづけ,病院から呼び出され驚いて来院した母親にも出産するまで妊娠していないと言い張っていた.
他方,少なくとも数年以上にわたって性交渉が全くないのにもかかわらず妊娠反応が出てしまうことがある.
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