連載 DNAは、いつ統合失調症の秘密を語るのか・4
ビタミンB6による治療の可能性が見えてきた!
糸川 昌成
1
1東京都医学総合研究所統合失調症・うつ病プロジェクト
pp.76-83
発行日 2013年9月15日
Published Date 2013/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689101222
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ドミノ倒しの2色波形
新井誠研究員によって、グリオキサラーゼ1の遺伝子解析プロジェクトがスタートして2年近くたった2006年頃だった。研修に来ていた学生が、実験を失敗し続けていると悩んでいた。データを見せるよう指示すると、遺伝子の配列が打ち出された用紙を持ってきた。
遺伝子は4種類の塩基の配列によってアミノ酸を合成するから、データは4色の波形となる。彼のデータを見ると、用紙の半ばまではきれいな波形が続いているが、途中から波形が乱れて塩基情報が読みにくくなっている。彼は「実験条件をいろいろ工夫したが、どうしてもうまくいかない」と苦労の数々を述べていた。しかし、彼の説明は私の耳には届いていなかった。用紙の半ばで塩基が1つずつずれていることが何を意味しているかに、私の意識は奪われていたからだ。
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