【臨床小説—第二部】後悔しない医者|今と未来をつなぐもの・第27話
“なんとなく”を解する医者
國松 淳和
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1医療法人社団永生会 南多摩病院 総合内科・膠原病内科
pp.899-904
発行日 2022年7月15日
Published Date 2022/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203832
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前回までのあらすじ 今月のナゾ
「この患者さん、今日の夕方、足が動かなくなる」という向後の“予言”どおりに、その患者(83歳・男性)は左足が利かなくなった。「血管炎」だった。右井は、直前の診察で下垂足になっていないこと、前脛骨筋に脱力がないことを確認していた。検査所見にも、軽微な炎症反応以外に所見はなかった。しかし向後は、異常を認めないはずのCT画像を一瞥し、「左の鼠径リンパが腫れていた」と言った。向後はいったい何を見ているのか? 右井は、わずかな異常所見も即座に指摘する熟練の画像診断医に「なぜわかるのか」と尋ね、「なんとなく」とはぐらかされたことを思い出していた。
一方、西畑が頭ケ島白浜病院に到着し、向後チームが明るく出迎えた。ついに西畑は向後との邂逅を果たした。
今回、順調に後期研修を進める西畑が、向後の外来の陪席で“気になる患者さん”に出会う。新型コロナウイルスのワクチン接種後の患者さんである。「なんとなく変」。変と変じゃないの境界に一線を引くことはできないが、そのあわいのグラデーションが西畑にも「なんとなく」見え始めている。
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