特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ
【総論】
患者自身でできる非薬物療法—特に運動療法の強調
酒見 英太
1
1洛和会音羽病院
pp.1176-1179
発行日 2020年10月15日
Published Date 2020/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429202816
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なぜ非薬物療法か?
高齢者の増加とあいまってポリファーマシーの害が叫ばれるようになって久しく、本誌2019年2月号(29巻2号)の特集「意外な中毒、思わぬ依存、知っておきたい副作用」(p.1226)でも紹介された通り、現代は薬物起因性疾患が巷に溢れている。たとえば、抗菌薬が多くの感染症を克服して平均寿命を伸ばしてきたにもかかわらず、その過剰投与が耐性菌を生み、我々が現在の行動を変えない限り2050年には耐性菌による死亡者が世界で1,000万人に達して悪性腫瘍による死亡者数を上回るとの推計も2017年に公表されたところである3)。もはや発熱にとりあえず抗菌薬というプラクティスは減ってきていると信じたいが、日本は今や先進国では数少ない医師免許更新制のない国であり、開業時の診療科目自由標榜制も維持されているため、徹底されるのはまだ時間がかかるかもしれない。また、新薬の販路拡大にかける製薬会社の意気込みはすさまじく、学会発表におけるCOI(利益相反)の表示は義務付けられたとはいえ、医学界全体への薬剤使用への圧力は相当なものがあるとの認識は必要であると思われる。
なお、薬物療法のはらむ危険と処方行為の裏にある臨床医の心理については、本特集の著者の1人である上田剛士先生の名著『クスリのリスク(医学書院、2017)』(p.1230)に詳しいので、是非ご一読をお勧めする。
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