特集 当事者に学ぶ
患者として,患者とともに医療を学ぶ―私自身の経験から
大橋 晃太
1,2
1NPO血液患者コミュニティ「ももの木」
2東京医科歯科大学医学部医学科
pp.345-349
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100395
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「お医者さんとお坊さんとは結婚するな!」
祖母が母によく言っていたセリフだそうだ。当初は何を根拠にそんなことを言っているのかわからなかったが,祖母が亡くなったとき,その言葉の意味が少しわかったような気がした。彼女が病院で最期の時を迎えると,泣き崩れる私たち家族の前に担当医がサンダル履きでパタパタ音を立てながら早足で現れた。「あっ,遅くなりました,すいません」と平板な口調で言って祖母の亡骸の方へ軽く会釈したかと思うと,ぼさぼさの寝ぐせ頭を直し始めた。そのとき,冒頭の祖母のセリフが頭の中をよぎった。さらに,落ち着く間もなく看護師が葬儀の手順について淡々と事務的に説明を行った。このときから,「医療者というのはなんて冷淡で無機質な人たちなのか」という印象が深く刻み込まれてしまった。
しかしこの4月,私は医学生になった。まさか自分が医師を目指すことになるなんて,本当に自分でも驚いてしまう。もちろん,祖母の死以後から生じる様々な出来事も,そのときは想像することすらできなかったが…。
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