特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!
【コラム Endocrinology in Generalist Medicine】
薬かもしれない、低K血症
宗 友厚
1
1川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科
pp.1080
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429201063
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
患者は「手足に力が入りにくい」との訴えで受診されたが、血圧が高く、血液生化学検査で低K血症が判明、「ひょっとして原発性アルドステロン症か?」と思って調べるも、確かに血漿レニン活性は低いが、血中アルドステロンも低値で、腹部CTで副腎腫瘍は見当たらない。よくよく聞いてみると、他病院で肝疾患の治療中であったり、漢方薬を飲んでいることが判明し、「なるほど!」と思い至った経験はないだろうか?
慢性肝疾患で強力ネオミノファーゲンC®を投与されている、あるいは甘草を含む漢方薬を内服している患者に、ミネラロコルチコイド(以下MC)過剰症状が見られることがあり、主成分であるグリチルリチン酸が原因を担っている。グリチルリチン酸は、欧米では菓子類の甘味料として汎用され、習慣摂取により高血圧、低K血症などMC過剰症状をきたすことが、すでに1940年代に報告されている。症状としては高血圧と低K血症に加え、筋力低下、筋肉痛、不整脈を認める。当初グリチルリチン酸自体がMC作用を持つために低レニン、低アルドステロン血症を呈すると考えられ、「偽性アルドステロン症」と命名された。その後血中、尿中のコルチゾール/コーチゾン比が増加していること、スピロノラクトンにより改善することから、腎臓における11β-水酸化ステロイド脱水素酵素(以下11βHSD)活性の低下によると考えられるようになる1)。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.