#総合診療
#書評:『ネルソン小児感染症治療ガイド 第2版』
大曲 貴夫
1,2
1国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター
2国立国際医療研究センター病院 国際診療部
pp.446
発行日 2017年4月15日
Published Date 2017/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200868
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評者自身は成人の感染症を専門としているが、修練の過程で、そして感染症医となってからも3〜4歳以上の小児の感染症診療にはコンサルテーションを通じて時折かかわってきた。しかし、評者は小児感染症の全体像を学んでいるわけではなく、本物の小児感染症医の先生方とは知識も経験も比較しようもない。本来この書籍はポケットに入れて日常診療のなかで日々役立てるものだが、このような評者の背景もあるため、評者自身は本書を「小児感染症を知るための手引き」として読ませていただいた。
本書全体に一貫しているのは、現在わかっているエビデンスと、エビデンスのない領域を徹底して意識し、それを指針にきちんと反映している点である。特に参考となるエビデンスのない事項に関しては、それを明確にコメントとして示している。たとえば、マイコプラズマによる下気道感染の項目では、「小児における前向きのよくコントロールされたマイコプラズマ肺炎の治療のデータには限りがある」との記載がある(本書p.83)。マイコプラズマ肺炎の治療薬を丸暗記することは誰でもできるが、このような記載には編集された先生方の臨床医としての良心的な姿勢を感じる。また、多くの感染症の治療期間は慣習的に定まってきたものでエビデンスに欠けるが、これもきちんと書いてある。治療期間の設定についてのマニュアルの書きぶりがあまりに断定的であれば、教条的になってしまう。読者がその記載に盲目的に従ってしまえば、診療に悪影響を及ぼす。「定まっていない」ことが明確に書かれていれば、最終的にはやはり全体像を踏まえての医師の判断が必要であることを意識できる。
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