巻頭緊急企画 明日はどっちだ?「総合診療専門医」
外科医の総合診療
北 和也
1
1奈良・やわらぎクリニック
pp.9
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200719
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30年以上も昔の話。外科医である私の父は、地元の奈良県三郷町に手術設備のある有床診療所を開設した。当時、周囲には医療機関がほとんどなかったので、近隣住民の健康相談は、老人も子どもも皆受けていたそうだ。その名残もあり、当時からの患者さんは子も孫も当院を受診させる。近所の保育園や小学校の保健室の先生も、生徒が怪我をしたら、とりあえずうちに連れてくる。
開院して2年間、父は自宅に帰らず診療所に泊まり込んだ。すべての救急を断らずに診ていたらしい。ある日、ショックバイタルの吐血患者が救急搬送されてきた。輸血が届くまで1時間以上かかる「万事休すか」という状況で、父は自分の血を600cc抜き輸血してから緊急開腹し、一命を取り留めたらしい。その時の患者は90歳になり、今も元気なのである。
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