Nomade
「総合神経外科医」をめざして
権藤 学司
1
1湘南鎌倉総合病院脳神経外科/脊椎脊髄外科
pp.165-166
発行日 2016年3月25日
Published Date 2016/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200313
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脳神経外科を始めた頃
昭和57年2月,弘前大学5年生のベッドサイドティーチングのローテーションで,国立弘前病院の内科で臨床実習を行った.数日たった頃,内科に頭痛とめまいを訴え,嘔吐しながら七転八倒している患者が入院した.内科の先生では診断がつかず,脳神経外科にコンサルトすることになった.当時その病院にはCTがなく,神経学的診察と脳血管撮影を行って小脳出血と診断された.同日夜9時過ぎから開頭血腫除去術が行われ,緊急手術を最後まで見学して午前2時頃,降りしきる雪の中を歩いて下宿に帰ったことを今でも記憶している.翌日病院に行ってみると,その患者は,「すっかりよくなりました」とベッド上に笑顔で座っていた.当時はまだ病棟実習が始まったばかりで,浅はかな学生だった小生は,内科は診断する科,外科は手術する科と単純に思っていた.この小脳出血の患者の経験は,内科系にも外科系にも興味をもっていた小生に,脳神経外科は診断も手術も行える診療科だと思わせることになった.
大学を卒業し横浜市立大学の脳神経外科で研修医をスタートさせることになったが,病棟に入院してくる患者さんはすでに外来で診断がついており,手術目的で入院してくることがほとんどであった.卒後3年目に入局し外来の初診を担当したが,飛び込みの初診患者は神経所見をとっても正常で,念のためCTをとっても異常がみつかることはほとんどなかった.その後,関連病院のローテーションで,「脳」外科医として頭部外傷や脳血管障害の診療に明け暮れたが,神経学的診察が役に立つのは,意識レベルの変化と,瞳孔不同や運動麻痺が右か左かのレベルが多かった.
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