臨床医に役立つ実践病理診断 病理医から臨床医へのメッセージ・6
膵囊胞性腫瘍の病理
須田 耕一
1,2
Koichi SUDA
1,2
1東京西徳洲会病院 病理科
2順天堂大学人体病理病態学
1Department of Pathology,Tokyo-Nishi Tokushukai Hospital
2Department of Human Pathology,Juntendo University School of Medicine
pp.310-316
発行日 2011年5月15日
Published Date 2011/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1428100399
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要旨
膵囊胞性腫瘍は,漿液性囊胞腫瘍(SCN)と粘液性囊胞腫瘍(MCN)に分けられる.
SCNは小さな囊胞が海綿状に多数みられ,組織学的に囊胞を構成する上皮がグリコーゲンに富んだ明るい細胞からなり,PAS染色で陽性に染まりジアスターゼで消化される.出現部位にあまり特徴がなく,膵管との交通がみられない.年齢・性別では中高年の女性にやや多い.本腫瘍の診断は一般に容易である.
MCNは粘液産生性上皮より形成された囊胞性腫瘍で卵巣様間質を伴っており,ほとんど例外なく膵体尾部で女性に起こる.MCNの診断において,卵巣様間質が明瞭でない場合は,鑑別対照となる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),特に分枝型が粘液産生性上皮で,拡張・囊胞化した分枝膵管の集合とみなされるので,そのような構造ではないかと疑うことが重要である.単房性囊胞腫瘍の場合も同様である.本腫瘍は,IPMNと混乱していた経緯より,確定診断には卵巣様間質の同定が必須であり,免疫組織化学的に核がエステロジェン,プロゲステロン受容体に陽性を示すことである.
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