囊胞内に分化度の異なる癌腫成分を認めたIPMCの1例

A case of intraductal papillary-mucinous neoplasm of the pancreas with poorly differentiated adenocarcinoma component in the cystic lesion.

要旨

　症例は，中咽頭癌の化学放射線療法後の85歳男性．経過観察中に施行したCTにて，膵頭部に多房性囊胞を指摘されていた．囊胞はCTで増大傾向を呈し，囊胞近傍に腫瘤性病変を認めたため当科入院となった．EUSでは，膵頭部に50mm大の多房性囊胞を認め，囊胞近傍には35mm大の，内部エコーが均一な低エコー腫瘤を認め，囊胞内に発育した腫瘤として描出された．病理組織学的には，拡張した分枝膵管内に大小の乳頭状に増生する腫瘍組織を認め，一部間質に浸潤する高分化型腺癌を認めた．また近接する囊胞は分化度の高い腫瘍細胞に裏打ちされ，内部には大型，多角形の腫瘍細胞を有する低分化型腺癌を認めた．