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畏友相川教授が書かれた本ということに大きな期待を抱きつつ,手元に届いた本書を早速読み始めた.親切なことに,本書の冒頭には,「本書の使い方」という章があり,そこには「使用法の実際」という読み方のガイドが書かれている.そこにある「一般的な使い方」という方の読み方の指示に従って,ざっと読んでみることにした.このガイドによれば,まずは英文の方は読まずに日本語の部分だけを読むこと,となっており,そうすれば45分間で読了するはずなのだが,ガイドの中では,本書を読む上での禁忌としている英文の部分までも熟読してしまったために,一応目を通すのには結構な時間がかかってしまった.それというのも,英文の部分も,読み飛ばすにはあまりにも面白かったからである.特に,PartⅡに紹介されている英文の文章は,大変面白い.ここには,日本人の間違いやすい表現で書かれた文例が100件掲載され,その間違いの解説と,修正されたより正しい文章が示されている.間違いのある文章の中には,一見どこが不適切なのか判明しがたいものも少なくないのだが,修正された文章とその解説を読むと,ははーなるほどと納得したり,思わず苦笑してしまったりする.やっぱり自分は日本人であることを改めて認識すると同時に,言葉の勉強の面白さに引き込まれてしまうのである.
順番が前後してしまったが,もちろんPartⅠの内容は極めて重要である.ここには,単に英文の書き方といった瑣末なことだけでなく,論文というものを作成するための基本的な注意が,こと細かに述べられており,まさに本書は論文執筆の作法の書なのだということが分かる.特に,原稿の準備やその構築に関する基本的な注意事項や,タイトルの書き方など,いかなる言語の論文の場合であろうとも,これから論文を書く人にはぜひとも読んでおいてもらいたいことが,大変親切に書かれている.また,投稿時の編集長への書簡,すなわちCovering Letterの意味や,その書き方に関する注意も,論文を投稿する人にとっては大変有用な情報であろう.
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