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■はじめに――ADMの近況と用語について
胆囊腺筋腫症(anenomyomatosis of the gallbladder,以下,ADM)は,最近になって癌の合併についての議論が行われるようになって注目を浴びるようになってきた.しかし,もともとADMそのものは非常に日常的な病態であり,診断や手術適応の問題など,多くの未解決なことがありながらも良性であるがゆえに近年はあまり議論の俎上に上ることがなかった.
表1に筆者関連施設である人間ドック超音波検査における胆道所見を示した.“ADM(疑いを含む)”2.1%,さらに疑い所見である“胆囊壁Comet”が1.7%と,その頻度は健常人を対象にしてもいかに日常的な病態であるかがわかる.診断,そして本病態をどう扱うか,そして癌との関連などの問題もこの背景の理解なくしては行えないと考える.注目されるにあたって,さらにもっと基本的な問題,すなわち,本病態の定義,特に組織学的な定義については,もともとRASが正常壁に存在することからも明確には確定しにくい事情がある.また分類については種々提案されているが,診断と病理の立場からも混乱がみられることがわかってきた.本稿ではこれらの基本的な問題につき解説を加え,さらにそれに関連する臨床的な問題についても考察を加えた.
まず先立って歴史的に混乱がみられた「ADMの用語」について述べる.ADMは従来種々の呼び方がされてきた.Adenomyoma腺筋腫,adonomyosis腺筋症,adenomyomatosis腺筋腫症,古くはcholecystitis cystica,cholecystitis glandularis proliferans,intramural diveruticulosisなどである.Adenomyomaは主に底部の結節状のものを表現していた.また腫瘍性病変ではないことから,-omaの表現は適切でないとの考えもある.しかし,近年は欧文誌でも多くはadenomyomatosisとされており,本邦でも日本消化器病学会の用語集で腺筋腫症adenomyomatosisが採用されている.
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