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はじめに
“膵・胆管合流異常の新たな展開―画像と病態”と言う特集が取り上げられるに当たり,すでに教室を離れて一昔を経過し,その間に自らの新たな研究成果もなく,この特集の“新たな展開”には程遠いと思われるが,筆者のライフワークとなった合流異常研究の歴史を回顧し,先人の慧眼に驚嘆しつつ「温故知新」,これからの若い合流異常研究者に何か役立つことがあれば幸いと思いながら,逐次,回想録とでも言うべき拙文を草して見たいと思う.
この方面の研究会を立ち上げて4半世紀を経た2002年,第25回日本膵管胆道合流異常研究会(大阪市)では特別講演「合流異常研究会4半世紀の軌跡」を担当する機会を戴き,“私のライフワーク合流異常”と題して発表した.
合流異常研究会は昭和53年(1978)に日本小児外科学会の夜の付置研究会の1つとして発足し,その診断基準を検討したのが第1回で,主に小児外科医が参加した.その後,大井ら1)のEPCG(ERCP)の技術の普及とともに内視鏡医や内科医,成人外科医,放射線科医,基礎医学者も加わり,小児外科夜の研究会は発展的に解消し,第6回からは日本膵管胆道合流異常研究会(徳島市)として,この形態異常と病態に興味を持つ各科の研究者が集い,討論を重ねて4半世紀を迎えたのである.この研究会の設立とともに,合流異常の研究は急速に進展した.日本に症例が多いことと相俟って世界のこの方面の研究をリードし続けている.症例の登録も年々増加し,2,000例の大台に迫っている.この成果は,この研究会参加施設の協力の賜物で,この会を創設した者として,また名誉会長としてこれに優る喜びはなく,感謝している.
この会のように極めて狭い分野の研究会は容易に研究が進み,諸課題が解明し尽くされて使命を達成し,短期間で解散に至るのが常であるが,この形成異常は人体発生学の研究が必須で,種々の困難が伴う.一方では,画像診断法は日進月歩で,より正確な合流形態や機能面での検討も可能となりつつある.その結果,分類や病態の解明がさらに進歩し,発癌機序の解明も進んでいる.興味深いことに,この病態は男女差,人種差が明らかで,これらの解明には分子生物学や遺伝子解析など,最新の技術の応用が必須で,新たな展望が拓けつつある.このような背景から膵管胆道系の合流異常研究は4半世紀に及んで止まるところがないと言えよう.本特集は誠に時宜を得た企画と思われ,この研究会のさらなる発展に寄与するものである.
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