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本誌の創始者の一人でありまた現編集委員として本誌を育てられた板井悠二先生が2003年1月19日に急逝された.年末にお会いしたときにお疲れのようであったので,RSNA(北米放射線学会)の名誉会員推挙のお祝いを兼ねて金沢の地酒“白山”をお贈りした矢先であった.先生は何事にも真摯に取り組まれ,特に“旧態依然たる権威”には情熱をもってその改革に取り組まれた.多くの,特に若い人たちが,先生を信頼し先生のもとに集った.私もその一人であったが,いつも結局のところ先生に頼っていたように思う.先生はその人徳,見識,人脈の故に余りに多くの人たちから頼られ,またそれらに真摯に答えられようとされたために,余りに多忙であったと思う.ご負担を和らげるべき努力をすべきであったと悔やまれる.
先生と初めて直接知己を得たのは,先生から,私のRadiology誌に掲載された論文についてお手紙をいただいた時であったと思う.もう20年も前のことになる.肝内門脈血流欠損肝区域が動脈造影で区域性濃染を示すことをCTAPで証明した論文であった.その数か月前に板井先生の有名なdynamic CTでのtransient hepatic attenuation differenceの論文が同様にRadiology誌に掲載されていたが,この現象をCTAPで証明したことへの賛辞であった.すでに高名であった先生からの直接のお手紙に大変興奮したのを鮮明に思い出す.そしてこれが先生との“肝血流イメージ”を中心とした交流の始まりであった.その後多くの学会や研究会で先生とお会いし長い時間お話をした.話題の中心はいつも肝画像,特に血流からみた病態の解析にあったように思う.多くの示唆,ご批判あるいはお褒めをいただいた.そしてなによりもそうした議論のなかでいつも先生から“encourage(勇気づける)”されていたように思う.いつの頃からか,あるいはどうしてかよく思い出せないが,“encourage”という言葉に遭遇するたびに先生が自然と脳裏に浮かんでくるようになっている.先生と共通の友人(先生からご紹介いただいた)であるNew Jersey大学のKC Cho教授からいただいた追悼のメールに,板井先生は“always try to promote his colleagues and juniors”であるという言葉があり,それは先生が国の内外を問わず多くの人たちから優れた指導者として認識されていたことの証であろう.
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