追悼
Barnes先生を偲ぶ
伊藤 秦二
1
1伊藤泌尿器外科
pp.590-591
発行日 1982年6月20日
Published Date 1982/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203377
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一人の人の死がこれほどまでに骨身にこたえるものであるということを,自分は今この年齢になつて初めて思いしらされている。Roger Barnes先生の死を報されて以来,今まで気付かなかつたけれども自分を内側から支えてくれていた温かい大きいものが音もなくすつと消えてしまつた虚しさをどうすることもできない。先生は84歳という長寿を全うされしかもそれは十分に充実したものであつた。TURを初め幾多の業績を残し,アメリカだけでなく諸外国からの数多い弟子たちを教育し,彼を知る数限りない人々に敬愛された。1979年には米国泌尿器科学会における最高の栄誉であるRamon Guiteras awardも受賞された。申し分のない一生であつたといえる。そう繰り返し自分に言いきかせるのだが,この大きい虚しさを容易に拭い去ることはできない。
想えば先生に初めて会つたのももう27年も昔のことになる。1955年9月私は迎える人のないLos Angeles空港に降り,真直ぐWhite Memorial Hospitalを訪れた。先生はちようどTURの最中であつた。
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