講座 症候からみた腹部エコー検査のこつ
鑑別のポイントと描出のテクニック
右季肋部痛
平井 都始子
1
,
高橋 弥穂
1
,
伊藤 高広
2
,
佐谷 徹
2
1奈良県立医科大学付属病院中央内視鏡・超音波部
2奈良県立医科大学放射線科
pp.424-430
発行日 2004年5月15日
Published Date 2004/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427100332
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右季肋部痛の超音波検査
1.どのような鑑別診断を想定するか?
右季肋部痛を訴える患者に対する腹部超音波検査から診断に直結する重要な情報が提供される疾患群は,肝疾患では急性肝炎,劇症肝炎,肝膿瘍,他に肝腫瘍の急激な増大,腫瘍内出血や腫瘍破裂など,胆囊,胆道疾患では急性胆囊炎,気腫性胆囊炎,胆囊捻転症,急性閉塞性化膿性胆管炎,総胆管結石や膵頭部病変により胆管を閉塞し急激に胆道内圧が上昇した場合など,が挙げられる.その他,十二指腸潰瘍,虫垂炎,右腎疾患や右尿管結石なども右季肋部痛を来たすことがある(表).肝,胆,膵に異常が認められない場合は,消化管病変や泌尿器疾患の有無に目を向けることが重要である1,2).
2.エコー検査をどのように進めるか
最初に痛みの強い部位を観察して病変をある程度確認してから病変の広がりや重症度,副所見を観察する方法と,順序を決めて異常所見の有無(表)を確認していく方法がある.急性腹症の場合は,前者の方法でできる限り短時間に診断を絞っていくのが望ましい.症状が落ち着いている場合は,主な臓器の異常所見の有無をまず確認して全体像を把握した後,詳細な所見を観察するほうが見落としは少ない.また,痛みの種類や範囲,黄疸や発熱の有無などを参考に疾患を絞っていく.急性胆囊炎,総胆管結石により急性膵炎を併発している場合,急性虫垂炎,尿管結石などでは激痛を訴える場合が多いのに対して,急性肝炎,肝膿瘍では鈍痛であることが多い.急性肝炎や胆道閉塞の場合は黄疸を,急性胆囊炎,急性閉塞性化膿性胆管炎,腎盂腎炎,急性虫垂炎などでは発熱を伴う.
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