連載 スーパー臨床神経病理カンファレンス・10
右手の筋力低下で発症し,構音障害,嚥下困難を呈した死亡時75歳女性例
岩崎 靖
1
1愛知医科大学加齢医科学研究所
キーワード:
筋萎縮性側索硬化症
,
Bunina小体
,
神経食現象
,
TDP-43
,
TAR DNA-binding protein of 43kDa
Keyword:
筋萎縮性側索硬化症
,
Bunina小体
,
神経食現象
,
TDP-43
,
TAR DNA-binding protein of 43kDa
pp.1271-1278
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202770
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〔現病歴〕70歳時,右手の脱力を自覚した。近医整形外科を受診し,頸椎X線検査(Fig. 1)で変形性頸椎症と診断された。リハビリテーションなどで保存的治療を受けたが,症状は次第に悪化した。71歳時,呂律が回りにくいことを自覚した。近医耳鼻科を受診したが,咽頭や喉頭の所見に特に異常はないと言われ,経過観察となった。72歳頃から食事を飲み込みにくくなったため,脳神経内科を受診した。神経学的所見では舌の萎縮(Fig. 2)と線維束性収縮,右優位の両上肢の筋力低下と筋萎縮,四肢の腱反射亢進を認め,両側のBabinski徴候が陽性であった。球麻痺症状(舌の萎縮と線維束性収縮),上位運動ニューロン徴候(四肢の腱反射亢進と両側のBabinski徴候陽性),下位運動ニューロン徴候(両上肢の筋萎縮)から,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と臨床診断された1)。
73歳時には両上肢の筋力低下と筋萎縮が進行し(Fig. 3),両下肢の筋力低下も出現した。74歳時から歩行が困難となり,車椅子生活となった。75歳時(発症5年目)に誤嚥性肺炎で死亡した。遺族同意のもと,剖検が行われた(Fig. 4,5)。経過中に経管栄養や人工呼吸器管理は行われていない。
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