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はじめに
2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)のパンデミックにより,医学部5〜6年生の臨床現場でのクリニカル・クラークシップは中止となり,オンラインでの実習のみを行うこととなった。
千葉大学脳神経内科ではもともと4週間の実習期間が与えられており,「重要な脳神経内科疾患の患者に対して,適切な問診,診察,基本的検査を実施し,その結果を解釈し,診断することができる」ことを学習目標にしている。その目標達成のため,COVID-19流行前はTable 1のようなスケジュールで実習を行っていた。
4週間のうちで少なくとも2名以上患者を受け持ち,毎朝の診療グループ回診前に学生1人で担当患者に会って診察し,アテンディング(教育専任教員)との30分程度のミーティングにて状況を整理した後に,グループ回診に参加する。グループ回診では,回診前に学生は担当患者の1分程度のプレゼンテーションを行い,担当医からフィードバックを受ける。さらに,回診中に診察手技を評価され,フィードバックも受ける,という形式で病棟実習を行っていた。そのほかに外来見学やいくつかの講義,シミュレーターを用いた腰椎穿刺の実習も行っていた。また最終週には,テーマを自由に決めて5分間でプレゼンテーションを実施し,学生同士で評価を行ってもらっていた。プレゼンテーションの最終評価は教授が主に担当し,4週間で受け持った症例のプレゼンテーション内容を評価していた。実習全体の評価は,アテンディング,病棟主治医,教授の3名がそれぞれ行い,その平均をもって評点していた。
オンラインのみの実習を余儀なくされた際にはTable 2のようなスケジュールで実習を行った。前半2週間は,外来受診患者の現病歴から疾患カテゴリー診断と神経学的部位診断を行い鑑別疾患を考えるという訓練を,急遽作成した40程度の模擬症例を用いて繰り返し行った。後半の2週間は入院患者の模擬症例を作成し,入院までの現病歴から疾患カテゴリー,病変部位診断を考え,それを基に鑑別診断を挙げ,必要な神経診察を提案してもらうようにした。さらに,神経診察の結果から部位診断を絞り込み,診断に必要な検査を考え,その結果から確定診断,治療計画を考えるトレーニングを行った。当時の実習学生は一度に14人おり,2人ずつを1ペアとして同じ症例を担当してもらい,さらに,プレゼンテーション内容について他のペアが評価・質問するようにした。カンファレンスや講義はすべてオンラインで実施した。
実地で実習が可能になった後も,オンラインでできる講義やカンファレンスへの参加,最終評価は引き続きオンラインで行った(Table 3)。病棟実習,外来見学,シミュレーターを用いた手技の実習はオンラインでは代替が困難であり,でき得る限り実地での実習を継続することが望ましいと感じられた。
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