現代神経科学の源流・15
ノーム・チョムスキー【Ⅲ】
福井 直樹
1,2
,
酒井 邦嘉
3
1上智大学大学院言語科学研究科
2上智大学国際言語情報研究所
3東京大学大学院総合文化研究科相関基礎科学系
pp.1155-1162
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201906
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構造主義との決別
酒井 さて,ハーバード大学に移ったチョムスキーは,まず何に着手したのでしょう。
福井 その同じ年に,修士論文の最後の改訂をやっています。その改訂では,バー=ヒレル(Yehoshua Bar-Hillel;1915-1975)やハレに会ってヒントを得ました。昔のヘブライ語には現れているけれども,現在のヘブライ語には現れていないものを,「基底形式」という抽象的な形式で設定すれば,現在のヘブライ語の形をうまく説明できるのではないか,というのが『現代ヘブライ語の形態音素論』(1951)(以下,『形態音素論』)の内容です。それはまさに,チョムスキーが10歳の頃に思いついた規則性と同じだった。歴史的な変化を,抽象的な派生過程として現代ヘブライ語の文法に組み入れることによって,最後の改訂が一気にうまくいったわけです。
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