連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・7
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の学位研究をめぐって② 内包後脚の体性機能局在(新説):大径有髄線維の存在
平山 惠造
1,2
1千葉大学(神経学講座)
2日本神経治療学会
pp.1052-1053
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201888
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
本シリーズ第3回で触れたが,冲中重雄教授(東京大学第3内科)から学位研究テーマとしてALSを与えられた。暗中模索の中でCharcotの原著1)を読んだ。本症の病像を詳しく知ることはできたものの,研究課題を見出すことはできなかった。手探りとして始めた1つが冲中内科に保存されていたALS剖検脳の病理標本を先ず1例で作製することにした。
出来上がった髄鞘染色標本で予期しない所見がいくつか見つかった2)。即ち,(1)錐体路変性が(Charcotは脊髄から橋の高さまでしか追えないとしていたが),内包でも認められる。(2)内包での変性部位は内包後脚の錐体路領域の全域ではなく後端部(淡蒼球の後端部に相当)に限局している。(3)中脳(大脳脚)でも錐体路領域の外側端に限局している。(4)橋,延髄ではこのような局在性はない。(5)変性の主体は錐体路中の大径有髄線維の脱落である。(6)大脳運動野全域(顔部,上肢,下肢)でBetz巨大錐体細胞の脱落が認められる。(7)更に3),脂肪染色で内包病変部から運動野皮質直下まで病変を追跡し得た4)。
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.