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はじめに
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis,以下ALSと略す)は,上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが選択的かつ進行性に侵され,数年で死に至る神経変性疾患1)であり,有病率は人口10万人あたり4~6人で,男女比は1.4~1.6:1と男性にやや多い2)。発症年齢は10歳代後半から80歳代と幅広いが,60歳前後が最も多い2)。発症から2~3年で急速に筋力低下と筋萎縮が現れ,ALSの進行とともに運動障害・球麻痺によるコミュニケーション障害・嚥下障害・呼吸障害がすべて現れてくるが,眼球運動障害・膀胱直腸障害・感覚障害・褥瘡は認められないのが一般的である2)。原因としては①興奮性アミノ酸説,②酸化的ストレス説,③自己免疫説,④神経細胞説などがあるが,いまだ特定はされていない1)。
ALSに対する有効な治療法は確立されておらず2),予後は人工呼吸器による呼吸の補助を行なわなければ2~4年と不良であり,人工呼吸器の継続使用では数年~十数年と生存可能である3)。近年の研究においてグルタミン酸拮抗薬リルゾール(riluzole)による延命効果2)や,神経栄養因子で神経細胞の生存と分化誘導の両作用を有する蛋白因子1)で,ニューロンの生存に不可欠であることが報告されている2)。これらの治療研究の推進は,難病患者230名を対象にした調査においても約半数が強く望んでいることが明らかにされている3)。
特効的な治療方法がない現状で,症状の進行を自覚しながら,徐々に制限されていく生活を体験している患者と,心身の負担や苦労が増強していく生活を余儀なくされる家族へのケアの提供は,看護専門職にとって大きな課題となっている。そこで,今回過去10年間に出版されたALSに関する主たる文献を検討したので報告する。
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