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書評 「機能解剖で斬る 神経系疾患 第2版」—中野 隆【編著】
祖父江 元
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1名古屋大学大学院医学系研究科神経変性・認知症制御研究部
pp.1105
発行日 2018年10月1日
Published Date 2018/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201142
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本書のタイトル「機能解剖で斬る神経系疾患」に著者である中野先生の考え方が凝縮されている。神経解剖の基礎・原理を知ることによって,神経疾患の診断・治療という応用問題を解きほぐすことができるということが示されている。我々も医学生の頃を思い出してみると,解剖学や解剖実習は医学的なものとの最初の出会いであり,記憶する学問であるという印象が強い。神経解剖の重要性が分かってくるのはむしろ,医師になり目の前の患者さんの症候と向き合って,どう診断し,どう治療を進めるのかという場に遭遇してからである。この時に初めて「解剖学(医学)は暗記ではない。数学と同様に考える学問である」という中野先生の言葉が身に染みるのである。前書きにも書かれているが,中野先生は神経内科実習での患者さんの診療体験から神経症候を機能解剖で解明する実体験を持たれ,応用問題として神経解剖の重要性を実感されている。このことがこの教科書の大きな背景になっている。まさに臨床の視点から見た神経解剖のエッセンスは何かという考え方が全編に溢れている。我々は思わずこれが解剖の書であることを忘れて,物語のように読み進んでしまうことに気づく。これが本書の大きなコンセプトであり,特徴である。
いろいろな工夫やカラクリが散りばめられており,学ぶ楽しさを伝えたいという熱気が伝わってくるのである。
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